「涼磨、どれくらい進んだ?」

 有里が客間に声をかけながら入ってくる。
 そこには押し入れから引っ張り出された多くの荷物だけが広がっていた。

「涼磨?……あいつ、サボりか!?お母さーん、涼磨どこ行ったか知ってるー?」

 そう叫びながら有里は客間を後にする。

 *****

 姉ちゃん、俺はここにいるよ。
 姿も見えないし、声も聞こえないだろうけど、ここにいるよ。
 そういえば、姉ちゃんは昔からヒナノの姿が見えてなかったね。
 ヒナノによると、姉ちゃんも5歳ぐらいまでは見えてたらしいけど。
 あっという間に見えなくなって、あっという間に忘れたらしいね。
 まあ、現実主義の姉ちゃんらしいな。
 あの日、あの“行方不明事件”の時みたいに姉ちゃんが俺を探し当ててくれないかなって、ちょっと期待しているんだ。……きっと無理だろうけどね。

『約束破ったら、私とずーっと一緒にかくれんぼしましょ』

 ヒナノの世界でかくれんぼ
 僕の世界からかくれんぼ

 母さーん、ばあちゃーん、姉ちゃーん、もういいよー