なんだか雰囲気がおかしい。記憶の中のヒナノはもっと無邪気な感じだった。見た目の問題?いや、違う。殺気……とまでは言わないが、なんだか有無を言わせないような、逃げられないような異様な雰囲気をまとっている。ヒナノの姿をまともに見られない。

「ごめん……僕はもうかくれんぼするような歳じゃないし、今日は片付けに来たんだ。そんなに長い期間はいられないから早く片付けないと……」
「片付け?どういうこと?」
「ばあちゃんを家で引き取るから、引っ越しの準備を……」
「引っ越し?なんで?りょーくんたちがこっちに住めばいいじゃない。そしたら、また一緒にいられるわ」
「そうはいかないよ。大学は都内にあるし、この家ももうだいぶ古いし……」
「引っ越しって、私を1人にするの?」

 ハッと気づいたときにはもう遅かった。
 いつの間にかヒナノは小さな子どもの姿に戻っていた。その目には涙が溜まっていた。

「私は、この家に()いてる妖怪なのよ。どこにもいけないの。なんで私をひとりぼっちにしようとするの?りょーくんひどいよ……」

 ヒナノはシクシクと泣き出してしまった。妖怪だってわかっていても、子どもの姿で泣かれては僕がひどいことをしてしまったみたいでバツが悪い。まあ、実際ヒナノにとって非情なことをしようとしてるのだけど。