「普通はね、みんな忘れちゃうの。私と一緒に遊んだこと、私のことも。りょーくんだって、もうずいぶん前に私のこと忘れたでしょ」

 僕は記憶をたどった。ヒナノを目の前にして、あやふやだった記憶をかなり思い出した。ずっと一緒に遊んでいた。でも、確かに、小学校5年生くらいだったか、祖父の容体があまりよくない時期があった。家族中がバタバタしていて、僕も遊びどころではなく、姉と一緒に慣れない家事の手伝いをしたりしていた。
 祖父は持ち直して、また落ち着いた生活が戻ってきた頃には、もうヒナノのことを忘れてしまっていたように思う。

「りょーくんのお母さんもおじいちゃんもひいおじいちゃんもみんな私のこと忘れちゃったわ」
「……ヒナノって何歳?っていうか、いつからここにいるの?」
「女性に歳を聞くものじゃないわよ」
「なんかごめん……」
「でも、りょーくんは思い出してくれた。私すごく嬉しいの。最近、この家に子どもが来なくて寂しかったのよ?ねえ、何して遊ぶ?」
「え?」
「やっぱりかくれんぼかしら。あっ、りょーくんがお望みなら、子どもの頃の姿に戻るわよ。それとも、他の遊びする?」

 そうまくしたてて距離を詰めてくるヒナノから、僕は思わず身をかわして距離をとった。