確かにいたはずなんだ。よく一緒に遊んだ。そういえば、なぜかいつも浴衣だった気がする。真っ黒のおかっぱ頭。都会の小学校にそんな女の子今どきいなくて、もの珍しさもあった。名前は……

「ヒナノ……?」
「はーあーい」
「!!??」

 声の方を振り返ると、そこには記憶の中の少女がいた。

「やっと思い出してくれたね」
「ヒナ……ノ?」
「そうだよ」
「なんで……」

 なんで、“あの時のまま”の姿なんだ。一体どこから来たんだ。
 聞きたいことがありすぎて、言葉にならない。

「なんでって、りょーくんが呼んでくれたからでしょ?」

 ヒナノが近づいてくる。

「え……」

 ヒナノが僕に近づく度、成長しているように見えた。いや、確実に成長している。小学生くらいの少女から、僕と同じ大学生くらいの女性に。背丈が伸び、着物の裾が伸び、髪も伸び……大人っぽい顔つきに変わっていく。
 僕は驚きを通り越して恐怖を感じていた。その場から動けない。

「どういうこと……ヒナノ、だよね?」
「そうよ。今は、この姿の方がりょーくんも話しやすいかなって」
「君は……一体……」
「まだわからないの?私は妖怪よ。座敷童(ざしきわらし)なんて呼ぶ人が多いかしら。私は見た目の年齢なんていくらでも変えられる。基本的に子どもにしか見えないみたいだから、子どもの姿でいるだけ」
「子どもにしか見えない?」

 じゃあ、なんで、今僕には見えているんだ。ていうか、僕はずっと座敷童と遊んでいたのか。