二人は雫のアパートに来ていた
「あと大きい物は布団と冷蔵庫と折り畳みテーブルと三段BOXだね」
「はい、あと食器です。自転車だと割れちゃいそうで」
「じゃあ、これで全部だね」
「はい、すみません」
雫のアパートを二度往復して荷物を運ぶ
竜二のマンションに荷物を運ぶ
「お布団干していいですか?」
「うん、カバーも洗っちゃいな」
ピンポーン
「どうぞ、お願いします」
家具が運ばれてきた
あっという間に家具が入れ替えられる
二人は昼食を食べながらこれからのことについて話す
「雫ちゃんは将来なりたいものあるの?」
「私はですね、とりあえず料理好きなんで今の大学で栄養士の資格はとれてるんですよ。でもその上の管理栄養士をとりたいと思ってます。三月に国家試験があるんですけど、県外でしかとれないので勉強してます」
「そうか、それで就職活動してないんだね、家からの仕送りは?」
「振り込んでくれてます。家賃と公共料金を払って、あとは生活費はバイト代からですね」
「ここに住むことになったら家賃も公共料金もいらないけど……」
「えっと、それは駄目です。私も払います」
「そういうと思った。じゃあ今の家賃分だけもらうよ。公共料金はいいから、あとバイト代は雫ちゃんが使っていいよ。服買ったり、試験受けに行く旅費を貯めてもいいしね。その代わり俺からお願いが一つある」
「はい?」
「バイトを週一日休みにしてもらいたい。何曜日でもいいから……本当はさ、毎日ご飯を一緒に食べたいんだけど、バイト好きだって言ってくれたし雫ちゃんのことを好きでいてくれるお客様もいるからバイトを辞めてとは言わない。でも週一回雫ちゃんとゆっくり夕食が食べたい」
「なんで、私みたいな学生にそこまでしてくれるんですか?」
「好きになったから……たまたま今、雫ちゃんが学生ってだけだろ?」
「それは……」
「俺ね、はっきり言って高校、大学も結構遊んでた。友達とも、女とも、彼女も何人かいたしね。その中でもはっきりお金目当ての人もいた。そういう人はすぐ縁を切ってきたつもりだけど雫ちゃんに会って、俺の財産を預けてもいいって初めて思ったんだよ」
「財産って、重くないですか?」
「重いよ。でも雫ちゃんは素直でよく人のこと気づいて仕事はいつも笑顔で雫ちゃんのレジの列に並ぶのも二、三日でも楽しみになってた。
この子なら一緒になりたいって初めて思ったんだよ。もう二十八歳だよ俺……雫ちゃんが大学卒業したら結婚考えてる。だから同棲したかった」
「私、荷物運んでて、もし別れた時アパート探しからまた始めなきゃって思ってて、だから不安もあったんです」