「おい、お前。
 なんで、今の男があやかしだってわかった?」

「疲れているように見えなかったからですよ。
 人間は疲れた人しか来ないんでしょ?」

 あの狐は人間のイケメンに化け、生き生きとして、楽しそうだったので違うと思ったのだ。

 そのとき、鳥居が途切れ、寺の境内に出た。

 鳥居をくぐったのに神社じゃないんだ、と思ったが、鳥居はただ異界へとつづく道の象徴だったのかもしれない。

 境内の隅の竹林。

 その前にぼんやりとした灯りが見えた。

 店の灯り。

 そして、赤い提灯の灯り。

「……駄菓子屋?」
と壱花に腕をつかまれたまま倫太郎が呟いた。

 竹林の前のその小さな古い建物の中にはカラフルな駄菓子が並べられており、奥のレジでは小さなおばあさんが、パチパチとそろばんを弾いていた。