そんな時、スクールカウンセラーの神代司が答えを出してくれた。

【あやかしなごり】

あやかしを先祖にもつものに発症する病。あやかしだった頃のなごり。

俄には信じられないが、いつもの自分とはまったく違う自分になってしまうことや、奇行で有名な生徒、北条来夢も同じ症状だということを考えると、信じる気になれた。

なにより、それが病気なんだと言われホッとしていた。

自分はまともで、すべては病気のせいなのだと。

さっそく、このことを信二に伝えよう。
そう思った矢先だった。


ドロリ……。


廊下の先で、女性教師の早見と楽しそうに会話をする信二を発見してしまったのは。

早見が笑いながら、馴れ馴れしく信二の胸を軽く叩く。


ドロリ。


あの感情が胸の奥から顔を出す。

それは脳の天辺から足の指先まで駆けめぐり、すぐに熱くギトギトの何かに美波を変貌させていく。


「熱い……」


(許せない、ゆるせない、ユルサナイ!)


「信二から離れなさい!」


自分の口から放たれた言葉は信じられない程大きく怒気を帯びている。
なんて恐い言い方をしているのか。


だが、そう思ったのは一度きりだった。