それは突然現れた。
相思相愛になって初めてのデート中だった。
彼に対して、カフェの女性店員が笑顔で話しかけ、映画館で隣に座った女子高生がこぼした飲み物を拭こうと彼に触れ、ばったり出くわした教師仲間の女性が親密そうに近づいてきた。
どの場面でも、ドロリ……ドロリ。胸の奥から熱い何かが顔を覗かせていた。
女性教師が、冗談を言う彼の肩を叩いた時には、体中をドロリとした熱い何かが駆けめぐっていた。
それは、
【彼に近づく女は許さない!】
【彼は私だけのもの】
そう言って美波の体を、心を怒りに染め上げていった。
それからは、彼が女性と二人でいるのをみかけるたびに、怒りに支配されていた。
せっかく念願叶って恋人同士になれたというのに、どうしてしまったというのか。
このままでは嫌われてしまう。
また、拒絶されてしまう。
頭では分かっていながらも、気づけばドロリとした何かに美波という存在は染まっていた。
いつの間に自分は、こんなにも嫉妬深くなってしまったのか。
わからない……。