が──、頭にやってくるはずの衝撃と痛みはなかった。


恐る恐る見ると、司が鞄を受け止めていた。


「来夢の言ったことは本当だ」


「くっ……どうしてそんなことがわかるのよ」


「こいつは俺に夢中だからだ」


「つ、司さん?」


その発言に、来夢は司の顔を仰ぎ見るが、


「主に俺の脛にだがな」


「……」


その口からはため息が漏れていた。




そこからは、


「ふざけないで!」


暴れ出した弓長に追い回され、逃げ切れたころには日が暮れていた。


標的が通りすがりの巫女さんから来夢へ変わったのがせめてもの救いだった。

来夢も元は無関係だが、さらに他人を巻き込まなくてよかったという意味で……。