「これは……思ったよりもあやかしの血が濃いな」


そんな修羅場を分析するように呟くと、司は玉砂利を鳴らし現場へと駆け寄った。

また手を繋がれていた来夢も引きずられるように一緒に向かう。


「落ち着け」


二組の間に立つと司が弓長を制止する。


「冷静になれ」


「しっかりしてください、先生!」


来夢も止めに入るがなぜか、


「なによあんた! やっぱり信二に気があるの!」


攻撃が移ってしまう。


「わ、わたしは違います。えっと……、私には司さんがいます」


咄嗟に握ったままの二人の手を持ち上げる。

しかし、


「二股ってこと!? おとなしそうな顔してやることはビッチね!」


「び! ビッチ!?」


弓長は止まらないどころか、勢いを増していく。


「司さんを騙して信二とコソコソ会ってるんでしょう!」


「そ、そんなことしてません!」


「嘘をおっしゃい! どいつもこいつも信二に近づく女は目狐の性悪女よ!」


取り乱した弓長が、持っていた鞄を頭上から来夢めがけて勢いよく振り下ろした。


バシッ!


乾いた音が辺りに響き渡る。