このデートが、来夢自身のためのものではなかったと……。

見れば、神社の巫女さんと高見沢の前で弓長が仁王立ちしていた。


「よくもそんな堂々と、他の女に触りまくって!」


弓長の言うとおり、確かに高見沢は巫女さんの肩に触れている。
が、奥手そうな男が彼女の前で他の女性を口説き始めるはずもなく、誤解は明らかだった。
すぐに巫女姿の女性が釈明をする。


「すみません。私が転んでしまったから」


「そうだよ。それを助け起こしただけだよ」


高見沢も弁解を始める。


「そんなに怒ることじゃ──」


「ならどうして、すぐに手を離さないの!」


言われざまに高見沢はパッと手をどけるが、


「浮気は絶対に許さない……。絶対に絶対に絶対に……」


先ほどまでほんわかしていた弓長の顔は見る見る怒気をはらんでいく。

先日、来夢を追いかけた時の鬼婆のような形相へ。


「キャアアア!」


危機を感じた巫女さんが悲鳴を上げる。


「う。うわあああ!」


止めなきゃいけないはずの高見沢も悲鳴を上げる。