「はあ……」
「疲れたか?」
お参りもほどほどに、来夢が神社のベンチに腰掛けていると、遅れてやってきた司が隣に腰を下ろした。
「はい、もうどっぷりとクタクタです」
デート相手に言うセリフではないだろうが、今回に関しては嫌みの一つもいいたくなるのだった。
なぜかと言えば、
「あっ」
今もそうだが、指摘してからここまでずっと、司は来夢の手を握りしめていた。
お団子屋なんかでは、離さないと食べられないと言うと、
「なら、食べさせてやる」
と、【強制あ~ん】までさせられたのだ。
デート未経験の来夢にとっては少々心臓に負担のかかった一日だった。
手を離していたのは、ついさっき参拝してからこのベンチまでの数分ぐらいであった。
司は社務所の方に用があると一瞬だけ消えていたのだ。
「来夢」
「はい」
「今日の記念だ」
司は繋いでいた手を離すと、そこへ【大丈夫】と刺繍された小さなお守りを置いた。