「な、なに!」
目の前には逞しい男性の胸。
司が来夢をヒョイと持ち上げていたのだ。
「こ、これって」
(お姫様抱っこ!)
「おい、あまり動くなよ」
「で、ですけど」
「歩けないなら運んでやる。先に行った二人とあまり離れたくはない」
突然のことに、断る暇もなく、というか腰が抜けて下半身に力が入らない来夢は、そのまま出口まで運ばれることとなった。
デートというシュチュエーションだからだろうか。弓長に追いかけられた時もされたことはあるが、今回は何故か妙に意識してしまう自分がいた。
幸い暗がりの為、顔が真っ赤になっているのは見られずに済んだし、途中、人が仮装した幽霊に出くわし心臓が飛び出るほど驚いたせいで、なんのドキドキなのか本人も分からなくなったため、取り乱すこともなく事なきを得るのだった。
その後もこんな調子で、来夢は色々な意味でドキドキさせられながらダブルデートは続き、遊園地を出て老舗のお団子やさんで休憩し、浅草神社でお参りをして解散しようという流れになった。
