突然のことにドギマギする来夢をよそに司は歩き出した。


「お、置いていかないでくださいよ! 恐いんですから」


来夢は離れないように掴まれた手を強く握り返し、暗闇へと足を踏み入れた。

中はうまい具合に恐怖を煽る薄暗さの狭い一本道が続いている。
左右は古びた家や木々に囲まれ逃げ道はない。


「つ、司さん……」


「どうした」


「恐くないんですか」


「作り物だぞ」


言った瞬間、


「ギャャアア!」


「ヒアアアア!」


断末魔のような効果音とともに茂みからガサッと生首が飛び出す。

司は微動だにしないが、来夢は悲鳴を上げ座り込んでいた。


「ハッ、あああ……」


「そんなにか──」


「こ、恐いんです……。む、昔からこういうのダメなんです」


「立てるか」


みっともないとは思いながらも腰に力が入らず、首をブルブルと横に振る。


と、


「へ!?」


体がフワリと浮き上がった。