──かくして今に至る、という訳であった。


それなのに……。


「司さん、いつも通りじゃないですか」


「ん? なにか言ったか」


「別にです」


司は恋人ではない時とまるっきり同じ態度で、服や化粧を褒めるでもなく、会ってから特に気を使うでもなく、甘い感じを出すでもなく、それどころか、


「腹が痛いならトイレをチェックしておけよ」


初っぱなから下の話であった……。


「あのう……」


中へ入ると、弓長が改まった感じで振り返った。


「北条さん、この間はごめんなさい。私てっきりあなたと信二が浮気しているのかと勘違いしてしまって」


「それはもう気にしないでください」


今日のデートは誤解を解くためだと高見沢が説明しているらしく、弓長は素直に頭を下げた。
この間の鬼気迫る表情とは打って変わって、生徒たちのよく知るおっとりと柔和な顔つきだ。


「こんなに素敵な彼氏がいるならそんなはずないものね」


「は、はあ」