テーブル越しに一人の男性の姿があった。


「そろそろよろしいでしょうか?」


男性はちょっとバツが悪そうにしながらも、二人を止めた。


「ん、そうだったな」


司は思い出したようにイスに腰掛け男性と向かい合った。

解放された来夢も席につきずっとそこで待っていた人物に視線を送る。


「先生、もう死ぬ気はなくなりましたか」


「いや、あれはまったくの誤解なんだけどね」


「誤解、ですか?」


そこにいた男性──共に逃げてきた担任教師高見沢信二は、苦笑いをしながら頭をポリポリと掻く。

一緒に学校からお店へやってきたのだが、来夢のなごり発作で待たされていたのだ。

なぜ待っていたかというと、


「では、はじめるか。カウンセリングを」


という理由だった。


高見沢は学校カウンセラーの司の元へとある相談に行く予定だったが、時間には来ず、それを不審に思った司が探して今に至るということだった。

とある相談というのは、なんとなく察してはいたが案の定というべきか。


「弓長美波のなごりの件のな」


「はい」


屋上からずっと疑問だらけだった来夢は、点と点が段々と繋がっていくのを司の脛をこすりながら、静かに見守った。