「もう、落ち着いただろう」
「あ! え? も、もうですか!」
ふいに至近距離にきた顔にドキッとしながらも、来夢は不満を露わにする。
それもそのはずで、現在の来夢は店の奥にある水道を使い右手で洗い物をし、
左手では司の脛を擦るという起用な芸を披露しながら自らのなごり発作を静めていたのだった。
二つのなごり発作同時解消に付き合わされた司は、やれやれといった体でいつものテーブルへ戻るとさっさと腰掛けてしまう。
来夢は慌ててそれを追いかけると、司の足をぐいっとテーブルへ持ち上げた。
「なんのつもりだ」
「まだ、すねこすりは収まっていないんです」
「だからといって足を勝手にテーブルに乗せるな」
「でも、これが一番触りやすいです」
「俺が横柄に見えるだろう」
「それなら心配いりません。いつも通りです」
来夢は笑顔で答えるが、司はジト目を向けた後、拒否を示すように無言でイスごと来夢に背を向けた。
「あ! 性格が悪いって意味ではないんですよ! なんていうか、ええと……偉そう!」
ギロリ、再びジト目が飛ぶ。
「うっ、違います。う~ん……恐そう? でもないし、なんというのでしょう……あ! 唯我独尊です! お釈迦様の言葉です!」
これだと言わんばかりに来夢は一差し指まで伸ばすが、
「ほう」
司は立ち上がると、来夢のコメカミのツボをグイッと刺激する。
「い、痛いですー!」
「誰がうぬぼれてるって?」
「え? そういう意味だったんですか!? 私てっきり良い意味かと──はうっ! 痛いですーー!」
とかやっていると、
「あのう……」