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「清姫!?」
かわいいぬいぐるみがずらりと並ぶわらし人形店。
素っ頓狂な声を上げると、来夢は目を大きく見開いた。
それもそのはずで、
「ああ、弓長美波。来夢の学校の女教師は清姫というあやかしのなごりもちだ」
担任教師の自殺を止め、女性教師に追いかけられた後、なぜか学校に現れた司とお店まで逃げてくると、着くなりそう告げられたのだった。
「じゃあ、さっき弓長先生がおかしかったのは発作ですか?」
「清姫は夜這いを断られて相手を焼き殺したという逸話があるあやかしだ」
「火炙りっ!!」
「さっきのはまだ軽い発作だろうな」
鬼の形相で追いかけられ、正直捕まる瞬間タダでは済まないと感じた来夢には、それはリアルに受け入れられた。
普段はおっとりしていて人気もある先生だけに、あの豹変ぶりがなごりというのも至極納得だった。
「でも、どうして司さんが学校にいたんですか?」
納得すると、次なる疑問が沸いてくる。
来夢は司が来てくれて助かった訳だが、教師と生徒以外ほとんど部外者が出入りすることのない学校という空間にどうして彼がいたのか。
司は来夢の知る限り、あやかしなごりを持つ人の元へ必ず現れるような能力は持っていないはずである。
すると、
「スクールカウンセラーだからな」
思いも寄らない答えが返ってきた。
「私の学校のですか!?」
「そうだ」
「それで、学校にいたんですか、全然知らなかったです!」
「はじめて言うからな」
司は当然だと言うように、平然と来夢を見やる。
「そうじゃなくて、私二年生なので学校へは一年以上通ってますけど、司さんを見かけたことは一度もないんです」
「事件でも起こらない限り、基本的には相談に来た者としか会わない方針を取っているからな。今回も同じだ。──それより」
司は真横にいる来夢に真顔を寄せた。