必死に手で空をもがくが、重心が外側にあった体はじょじょに倒れはじめ空中へと移動していく。
「ぬわっ!」
「先生! 自殺なんてダメですぅ!」
悲壮な顔で北条は叫んでいるが、これはどっちかと言うと他殺じゃないのか?
そんなツッコミが頭を過ぎりながら、重力に引き寄せられていく。
「先生ーー!」
なんという人生の終わり方だろう。
(ただ、気分転換に外の空気を吸いに屋上に出ただけなのに……)
唯一の救いは、教え子が教師である自分の死に涙を──流してくれてはいなかったが……。
それどころか、
「自殺は地獄行きですぅー!」
最後に成仏できそうにない言葉まで投げられたが、それでも彼女なりに悲しんでくれてはいた。
そう思うことで、信二は、
「うわあああああ! 助けてくれえええ!」
やっぱり死にたくはなかった……。
必死に腕を伸ばし、北条の腕を掴む。
「ふーぬぅうう!」
「うおおっ!」
間髪おかずにもう片方の手を屋上の縁にかける。
──そして。
「た、助かった……」
「よかった……です」
気づいた時には、屋上に這い上がることに成功していた。
高見沢は一気に力が抜けると屋上に寝転がった。
北条も緊張の糸が解けたのか同じように体を投げ出していた。
見上げれば空は何事もなかったように晴れ渡り、頬を清々しい風が撫でていく。
なぜだか、笑いがこみ上げてくる。
「フフ、ハハハ」
「アハ、アハハハハハ」
「先生、もうおかしなことを考えちゃダメですよ」
「ん? あ、ああ……」
北条はまだ勘違いしたままではあるが、一時でも悩みを忘れかなりスッキリしたので高見沢は「まあいいか」と再び空を見上げた。
しかし……、