司といがみ合いでした口約束だが、それを律儀に守っている。現実主義というか蒼士には根がクソのつく真面目なだけに見えた。
来夢に言わせれば、
「きっと本城さんは照れ屋なんですね。ちょっと司さんに似てます」
で、司に言わせれば、
「あいつはただの頭でっかちだ」
であったが。
「そういえば司さんも響子さんを責めなかったですよね」
今度は来夢が疑問を口にする。
「なぜ責める?」
「副署長室で、顔を響子さんに撃たれて血がでてましたよね。下手したら死んでたんですよ」
しかし、
「あれか……。あれをやったのは響子じゃない」
意外な答えが返ってくる。
「あれをやったのはこいつだ!」
と同時に、蒼士の頭に拳骨も飛んできた。
「痛! なにすんの、司!」
「三日遅れたが、それはこっちのセリフだ。最初に蒼士が響子の腕を押さえた時、勢いで発砲しただろう」
「あ! 司さんの横の壁に穴が空いてました」
「え? もしかして……」
「そのもしかしてだ。その時に撃たれた傷がこれだ」
司はこれ見よがしに頬の絆創膏を指さす。
「罰としてお前も今日は一日無給バイトだ」
「えーっ! やっと休み貰ったのに! この後はいっぱい食べていっぱい寝る予定だったのに!」
「つべこべ言うな。ちゃんと働いておけよ! 来夢、二人がサボらないよう見張っておけ」
言うと司は立ち上がり店を後にする。
まだ残る最後の謎を解決するために。