「陽葵ちゃん!」
それは、来夢の数少ない友達のひとり。クラスメイトの石田陽葵(いしだひまり)だった。
「来夢! どうしてここに──って、そんな場合じゃなかった」
陽葵は、来夢がいることに驚きながらもすぐにその隣へと視線を移した。
「あなたが、ここの店主の司さんですか」
「ああ」
司は陽葵をじっと見つめながら頷く。
「なら、助けてください! 私、なごりがあって、それで、ストーカーをなんとかしたいんです!」
「ストーカー!? 大変じゃないですか! 警察に行きましょう! ──あれ、でもどうして司さんに相談を? 司さん、刑事なのですか? ぬいぐるみ屋さんの刑事? んん……?」
陽葵の言葉が聞き捨てならずに来夢はあたふたしだすが、
「おい」
「え? わたし? ですか」
「そうだ、来夢」
「なんでしょう」
「少し黙ってろ」
「あうっ……」
司に静かに一喝され、素直に口を閉じた。
「そっちは陽葵と言ったか。詳しく話してみろ」
「はい。さっきも言ったとおり助けて欲しいんです。ストーカーを何とかしたいんです──」
そこまで言うと陽葵は一度躊躇うようにタメを作るが、
「──わたし自身がしてしまうストーカー行為を!」
すぐに、そう締めくくった。
「そうか」
それに対して、司はさして驚きもせず静かに頷くが、
「えええーっ!」
黙るよう言われたはずの来夢は、瞳を大きく見開いて驚きを露わにするのだった。