『柚葉は盗みの止められない友達をずっと見逃してきた。それを結婚をするなら隠し事はなしにしたいと打ち明けてくれたんだ』
『結婚!? するんですか!』
『ああ、正直不釣り合いだと思って俺自身が煮え切らなかったんだが、本城警視が柚葉にプロポーズをしてな』
『警視が! こっちは美男美女だ! ──ああ、分かった! それで中田さんはフラれて柚葉さんを脅してたんですね』
蒼士が空気を読まない発言をするが、そこは来夢にキッと睨まれすぐにおとなしくなる。
現実はそれをきっかけに中田も重い腰を上げ、結婚をする気になったということだった。
『俺にその気がないなら警視の申し出を受けると柚葉に脅されてな。ハハ、年甲斐もなく焦ったというわけだ』
そして、署で起こっている盗難事件の秘密を打ち明けられた中田が、柚葉に響子を止めるよう説教しているところを来夢が盗み聞きしたという訳であった。
中田は口が悪いだけに誤解を招くようなセリフが多々あったが、説明されると納得だった。
『いっそ自殺してもらうか、は流石に言い過ぎだった。カーっとなってついな……』
『それで、柚葉さんを捜していたのは、一緒に友達を止めようとしていたんですね』
『そういうことだ、なぜこんな大々的に盗んでいるのかも分からんからな』
すべてを明かされ来夢は一瞬終わった気になっていたが、中田の言葉で我に返る。
今は、あちこちで物がなくなり警察署中がパニックになっているという話だった。
耳を澄ませば廊下からは、大きな声や誰かが走り回っている音も聞こえいる。
『犯人は二人の結婚話を知っているのか』
ここで司が名探偵よろしく口を開く。
『いや、すべてが終わったらみんなに言うつもりだった。柚葉もまだ誰にも言っていないはずだ』
『本城のプロポーズは?』
『イケメンエリートのプロポーズだ。女性の間では噂になっているようだから、誰が知っていてもおかしくはない』
『そうか、なら……』
司は顎に手を当てて少し考えると、
『そういうことか』
謎は解けたと言わんばかりに一人納得しはじめた。
『中田さんは柚葉を捜して念のため隠れていてくれ』
『隠れる?』
『ああ、さっき柚葉に犯行を止められた犯人はおそらく自棄になっている』
ロッカーでの話をすると、すぐに中田も納得した。
『長年唯一の味方だった柚葉に見放されたと思ったのか。なら……』
『原因を狙う可能性がある』
『どういうことですか?』
『え!? なに?』
未だ話の見えない来夢と蒼士は、移動中に説明を受けながら、司と共に本城の元へ向かったのであった。