『お前たち、柚葉を知らないか』


扉を開けるなり中田は焦ったように早口でまくし立てた。


『まったく、こんな大変な時にあいつはなにをしているんだ』


いないと見ると、すぐに部屋を出ようとするが、


『待ってください! 聞きたいことがあります』


来夢がそれを止めた。


『なんだ! 見て分かるだろう。急いでいるんだ』


中田は拒否して去ろうとするが、


『柚葉のことだ。お前が脅していたな』


司が言い放つと、半分行きかけていた中田は部屋へと入りドアを閉めた。


『どういうことだ』


『昼間、ここから柚葉を連れだして大会議室へ行き、彼女を脅していたのだろう?』


『そうか、お前らか! あの時盗み聞きしていたのは!』


中田は顔を真っ赤にして怒気を露わにするが、


『私です! でも、どうしてあんなことをしたんですか。柚葉さんが可哀想です!』


来夢が負けじと抗議の声を上げると、


『かわいそう?』


その言葉が引っかかったようで口調が和らいでいく。


『……確かに、そうだな。可哀想だ。あいつは可哀想な女だ』


そして、近くにあったイスにドカリと腰を下ろすと、ハアーと深いため息を吐いた。


『もう限界かもしれんな。隠し通すのは……』


『中田さん?』


中田は先ほどまでとは打って変わって落ち着いた表情になると、話し始めた。
事の経緯を。


『実はな……。俺と柚葉は付き合っているんだ。冗談ではなく男女の仲でだ』


『は?』


『え!?』


突然の告白に、みんなの目が点になる。


『ええと、中田さん……本気ですか』


と来夢。


『美女と野獣?』


これはもちろん蒼士。


二人の反応は予期していたのか、中田は自嘲ぎみにフッと鼻を鳴らす。


『不釣り合いなのは分かっている。俺のなにが良かったのかも分からん。だが、問題はそこじゃあない。問題はあいつの抱えていた悩みだ』


『もしかして、泥棒の友達ですか』


『なんだ、そこまで知っていたのか。素人が半日でそこまで捜査するとは大したもんだな』


中田は感心したように司と来夢を交互に見やった。


『あのう、僕もいるんですけど……』


蒼士は不服そうだったが、話は進む。