来夢の方はまだ手を止められずスリスリしながらも、されている司へ向き直る。


「そう言えば司さん。どうして、更衣室に犯人が来るって分かったんですか」
現れる前に司は【犯人が来る】と確かに言っていたのだ。


「来夢が高速ハイハイで逃げた後、俺は大会議室を出てきた柚葉の後をつけていた。挙動がきになってたんでな」


確かに、昼食時は元々誰かに連れて行かれた柚葉の後をつけていたのだと来夢も思い出す。

あの時は洗い物のなごりと柚葉を脅していた男性から逃げるので精一杯だったからすっかり忘れていた。


「それで、たまたま犯人と柚葉が更衣室に行くという話を小耳に挟んだ」


「じゃあ、最初から全部知っていたんですか」


「一緒に更衣室へ入った人物が犯人だと確信したのは来夢の話を聞いたいまだがな」


「あのメールは? 犯人が来るって言ってましたよね」


「推測だったが、当たったな」


「予想だったんですか! 私ビックリして頭ぶつけちゃったんですよ!」


「だが、緊張して微動だしなかっただろう。おかげで隠れているのもバレずに済んだ」


「それはそうですけど……」


なんだか、遊ばれているようで納得できなかったが、


「おい、どういうことだ!」


「こっちだ!」


「捜せ!」


廊下から騒がしい声と靴音が響いてくる。
それも一人や二人ではなく、大勢の動き回る音だ。

さらに、勢いよく部屋の扉が開いたかと思うと、


「柚葉は! 柚葉はどこだ!」


顔を真っ赤にして怒気を露わにした男性──柚葉を脅していた中田が現れるのだった。