茶番はさておき、来夢はもう一カ所盗難があったという更衣室へ司、蒼士と共に向かっていた。
柚葉の一件はただごとではないとは思ったのだが、なぜか司は、
「ほう、そういうことか」
と、驚きもせずひとり納得し、
「まあ、大丈夫だ。俺に考えがある」
まだ調べていない更衣室へ行こうと言い出したのだった。
蒼士は一応柚葉のことが心配そうではあったが、友人の司に絶大の信頼をおいているらしく、
「司がそう言うなら」
と、付き従う。
来夢は納得したわけではなかったが、ひとりでなにを出来る訳でもなく、怖い思いをした後でひとりきりになりたくもなく、しぶしぶついていくことにした。
「でも、どうするんですか?」
「どうした?」
「次に行く場所って女子更衣室ですよね」
元々来夢は柚葉と一緒に来る予定だった場所だ。
事件の手掛かりを探すにしても、公式の捜査は一度終わっているはずだから、男性は中には入れないだろう。
「もしかして、ですか?」
そう思ったところで、更衣室へたどり着くと案の定。
「よし、頼んだぞ来夢」
であった。
「また、私ひとりで行くんですか」
「女子はお前だけだからな」
「そうですけど……」
なごりのおかげで、あまり物怖じしない来夢ではあったが、さすがに先ほどの後では躊躇もする。
それに捜査なんてしたことがないのだ。事件現場を見に行っても、ひとりではなにをどうしたらいいのかもわからない。
その考えが顔に出ていたのか、司が励ますように来夢の肩をポンと叩いた。
「大丈夫だ。なにもする必要はない」
「そうなんですか?」
「ああ。さっき蒼士から聞いたが女子更衣室には空きロッカーがあるという話だからそこに隠れて見張っていればいい。俺たちには狭いだろうが来夢なら入れるだろう」
「はい?」
「更衣室に人が来たら、そこで話を聞いていればいいんだ」
「また盗み聞きするんですか!?」
「盗み聞きではない。たまたまロッカーに入っているところで、たまたま聞こえてくる声に耳を傾けるんだ」
「心配ならこのぬいぐるみを貸そうか?」
司の屁理屈と、心配そうにしながらニセモノの幸運ぬいぐるみを差し出す天然な蒼士に来夢は再び頬を膨らませて抗議するが、もちろん。
「さあ、空きロッカーは奥から二つ目だ」
司はスルー。
「来夢ちゃん、それリスの真似? かわいいけど、モノマネを披露するのは今じゃないと思うよ」
蒼士に至っては、見当違いはなはだしかった。
だが、
「それで事件が解決できるんですか」
来夢はイヤとは言えない押しに弱いお人好しであった。