と、


「あれ、おかしいな……」


受付の女性が、なにかを探すように資料を持ち上げたり、足下を見たりしていた。


「斉藤さん、どうかしました?」


「休憩に行こうと思ったら、ここへ置いておいた携帯電話がなくて」


「まさか」


蒼士が司と来夢を振り返ると、


「おい、俺の財布しらないか?」


「私の手帳が──」


奥でデスクワークをしていた警官もざわつきはじめた。


「また起こった! どうする司」


「……」


司は慌てる蒼士を無視して、あたりを確認する。

受付近くには、なにかの手続きをしにきたらしい男女が三人と、最近よく街中でみかける飲食物配達の大きな四角いリュックを背負った女性が一人。
受付奥には無くした物を探す警官が二人に、その二人の騒ぎに集まりだした警官が五人はいる。

誰もが、「どうしたの」とか「またか」と言い合っていた。


「司、犯人分かった?」


「さすがです!」


「なぜ、そうなる」


「いや。いま、無言だったから。頭の中に凄い数式が現れてそれを一瞬で解いたのかと思ったんだけど」


「私は空間把握能力で瞬時に見破ったのかな~って思いました」


「……お前ら……俺をいったいなんだと思ってるんだ」


「安倍晴明の子孫」


「残念なイケメンですけど、スゴイ人です!」


「……」


司はため息を吐くと、二人の頭をガシッと掴んで言い聞かせるように凄む。


「俺はただの人形屋だ。勘違いするな」


そして、手のひらサイズのカワイイぬいぐるみを取り出し蒼士の前に差し出した。


「これって……幸運のぬいぐるみ。僕が使ってもいいの?」


「使い方は分かるな」


「やった!」


蒼士は笑顔でぬいぐるみを受け取ると、子供のようにはしゃぎだす。


「実は昔からずっと使ってみたかったんだ。手作りに時間がかかって希少だからあやかしのなごりで困っている人限定だもんね」


そして、


「幸運のぬいぐるみくん。どうか事件解決に力を貸してください」


早速とばかりにぶつぶつと祈り始めた。


それを見ていた来夢が司に耳打ちする。