……しばらく後。
「へえ、大学時代からのお友達ですか」
「そうなんだ。もう五年以上になるかな。ね、司」
三人はテーブルを囲んで談笑していた。
と言っても、話しているのはもっぱら突然現れて司を逮捕──するフリをした蒼士という警官と来夢だった。
職業が警察官だというのは本当だがあくまで逮捕は冗談だったらしく、手錠ををかけた後すぐに屈託のない笑顔になった蒼士は司に抱きついていた。
「久しぶり! 司」
もっとも、
「暑苦しい」
司は仏頂面でそれをふりほどいていたが……。
そこからは、びっくりついでにテーブルから這いだした来夢への誤解を蒼士が解いて今に至るという訳だ。
二人はしばらく自己紹介がてら互いに質問をしていたが、
「お二人は親友なんですか?」
その問いでようやく静かだった司が口を開いた。
「来夢……。この脳天気と俺が仲良く見えるならお前の目は0歳児からやりなおす必要がある」
「またまた~。司は相変わらず素直じゃないな~」
「蒼士……。お前は口を動かす前にまずこれをはずせ」
司が手首を持ち上げると、そこにはいまだ手錠がはめられていた。
「ん? ああ、それね」
と言いながら蒼士は鍵を取り出すが、そこで手を止めた。
「実は司にお願いがあるんだけど……」
「断る」
「まだなにも言ってないじゃないか」
「人を拘束していうことをきかせるのはお願いではなく脅迫だからな」
「でも、こうでもしないと僕の頼みなんてどうせ聞いてもくれないでしょ」
「わかっているなら来るな、帰れ」
「ガーン!」
ビシッと一喝され蒼士はテーブルに上半身を投げ出す。
が、司は眉一つ動かさず蒼士から鍵を奪うと、手の拘束を自分で解いた。
「司さん、聞いてあげるだけでもしてあげないんですか」
しょんぼりとした蒼士を見かねた来夢が口を挟むが、
「どうせロクなことではないからな」
あっさりと拒否。