「あ、司さん。こんにちは」
「こんにちは」
「挨拶はいい……。ここでなにをしている」
「なにって……」
「ねえ」
二人は顔を見合わせると、不思議そうに司を見つめた。
「陽葵ちゃんと結城くんが仲良く帰った後、今回のことを説明するから日をあらためて来いって言ったのは司さんですよ」
「そうそう。私たちいろいろ聞きたかったのにあの時は、疲れたから今日は帰るって、私たちを置いて帰っちゃいましたよね」
確かにそんなことを言った気もする。疲れていたというのも事実だ。
しかし。
「だからと言って男を奪われた女と、奪った女の親友に仲良くしろとは言っていない」
「なによ、それ」
「そうですよ! あれから三日間毎日学校帰りにお店に来てるのに、ずっとお休みだったんですよ。それでやっと今日は開いてると思ったら、そこに座ったままずーっと縫い物して、挨拶しても返事もないし」
確かに昨日まで店は閉めていた。今日は午後から開けたがさっきまで手作りのぬいぐるみを作っていて集中もしていた。気づいたら二人が座っていたのだ。
だが、それはそれだと司は脳の中でひとり納得する。
「それでなぜおまえたちが友達になる?」
「それは、最初はちょっと気まずかったですけど、毎日お店の前で二人で待ってたらお話だってしますし」
「お互い悪い人じゃないって思えたってことでしょ。そんなことより司」
「──司?」