「あ、結城くん! これは、その、違うんです! 決して二人の邪魔をしようとした訳ではなくて──」
「そんなことより、北条。その突然洗い出すやつ、休みの日も出るのか?」
「……はい。学校だからとかではないです」
「なら、授業をさぼるためにおかしなフリをしていたんじゃないのか」
「ああ、やっぱりそう思われてましたか」
授業中に突然教室を抜け出したりしていれば、単純にそう思われても仕方のないことだった。
現にクラスメイトの大半はそう思っていると陽葵に聞いたこともある。
「どこにいても突然起こるんです。自分では止められない発作が」
「発作……」
「智也、信じてあげて。来夢はやりたくてやっているんじゃないの。本人だってみんなに変な目で見られるって分かってる。けど、止められない病気みたいなものなの」
「陽葵」
気づけば陽葵もやってきていた。
陽葵はそれでも手を止めない──いや、止められない来夢の横に屈むと、頭をやさしくポンと叩いた。
「そこ以外をちゃんと見てればわかるよ。来夢は友達思いのすごく良い子だって」
「確かに……。そう言われたら、それ以外、北条の嫌われる要素なんてないけど……」
そこでようやく智也は何かに気づいたようにはっとする。
「それって! もしかして、陽葵のストーカーも同じだってことか!」
「もしかして、じゃなくて正解。少しは話、聞いてくれる気になった?」
「理由があるのか」
「簡単には信じてくれないかもだけど、あるよ」
陽葵は立ち上がると、目に涙を浮かべながらも、
「長~くなるから覚悟してね」
いつもの調子を取り戻していた。
「なら、俺の家でゆっくり話そう」
「うん」
さっそくとばかりに歩き出す二人。
同時に反対側から近づいてくるやよいと司の姿があった。
司は相変わらずのポーカーフェイスだが、やよいの顔はどこか晴れ晴れとして見えた。
陽葵たちを見送る来夢の瞳には、未だ陽葵の腕にしっかり抱かれたまぬけ面のぬいぐるみが満足気に笑ったように映った。