その行為がショックだったのか、陽葵はその場にぺたんと尻餅をつく。


「ど、どどど、どうしましょう!」


これまで見守っていた来夢だが、さすがの展開に助けを求めるように司の袖を引いた。


「司さん、なんとかしてください!」


「無理だ」


「ええ!?」


「やるのは俺じゃない。アイツだ」


司はいまだ陽葵の手の中で握りしめられていたぬいぐるみを指さす。


「そうでした! 幸運のぬいぐるみ!」


言うが早いか、来夢は陽葵の元へ走ると、


「まだです!」


ぬいぐるみを持っている陽葵の腕を彼女の胸へと押し当てた。


「……来夢? どうして、ここに?」


涙を浮かべた陽葵は、不思議そうに問うが、


「そんなことより、まだ終わってないです! 幸運のぬいぐるみ! はやく使ってください!」


そう言って、頷いてみせる。


それで思い出したのか、陽葵ははっとすると、ぬいぐるみを力強く抱きしめた。


「幸運のぬいぐるみ。どうか、どうか、私を助けて──」



その時──。


来夢は確かに見た。
間の抜けた顔だったはずのぬいぐるみが、やさしく微笑むのを。


次の瞬間。

幸運は舞い降りてくる。

祈った本人。陽葵にとっての幸運が──。