「司さん……」


「どうした」


「あたし、えっと、忘れていたらいいんですけど……その、気絶する前になにか言ってませんでしたか?」


「俺を好きってことか?」


「あうっ!?」


そう、あの時、ぬいぐるみに祈る直前、多少朦朧とはしていたが、来夢は確かに、

『──これは、この気持ちはとっても素敵なものです! いまならあたしにもわかります! だって……だって、あたしは司さんが、す──好きだから!」


そう告白していた……。


あれが、清姫の意識ではないことは司なら見抜いているだろう。

いま思えば、どうしてあんなことを口走ったのかは、わからない。
おそらくは清姫のなごりに、心に触れたのが原因だろうと来夢には思う他なかった。


だが、ふと気づけば、司に対してこれまでにはなかった、ある感情が芽生えたのも事実だった。

それはまだ不安定でか細くはあるが、暖かくて胸の高鳴る、いまのように彼に寄りかかっていたい。そう思える感情だった。


だから、


「好き……だと思います。まだよく分からないんですけど」


そう素直に口にしていた。


それに対して司は、


「そうか」


そう言って、珍しく優しく来夢の頭を撫でるのだった。


来夢はその心地よさに目を閉じると、司へゆっくりとその身を預けた。