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三十分程前──。
気づくと、来夢は司の腕の中にいた。
先ほどまでのことはうっすらと覚えている。
清姫のなごりのせいで、司を自分のものにしようと必死だった。
なごりのせいで……。
「あの……」
「起きたか」
「は、はい……ええと、どうなったんですか、あたしぬいぐるみに──」
「大丈夫だ」
言うと、司は遠くに見える校庭を指さした。
「全員無事のようだ。いまもなごりは継続中だがな」
見ればみんなが水道に集まって洗い物をしているように見える。
「え!? あれって、あずき洗いですか?」
「そうらしいな。まあ、洗い物なら安全だ。なごりも直に収まるだろうしな」
「高見沢先生は?」
弓長をとめようとして屋上にいた高見沢の姿がどこにもなかった。
弓長もいない。
「間一髪だったが2人とも無事だ」
「どこにいったんですか?」
「帰らせた。まだ記憶の残る生徒に絡まれたらやっかいだからな。みんな明日になれば、忘れるだろう」
「あやかしのなごりなんて誰も信じないですしね」
「そういうことだ」
すべて、無事解決した。
が、そうホッとした瞬間、来夢はとあることを思いだしていた。
意識を手放す瞬間、司に口走った一言を……。