※※※※※


三十分程前──。


気づくと、来夢は司の腕の中にいた。

先ほどまでのことはうっすらと覚えている。

清姫のなごりのせいで、司を自分のものにしようと必死だった。
なごりのせいで……。


「あの……」


「起きたか」


「は、はい……ええと、どうなったんですか、あたしぬいぐるみに──」


「大丈夫だ」


言うと、司は遠くに見える校庭を指さした。


「全員無事のようだ。いまもなごりは継続中だがな」


見ればみんなが水道に集まって洗い物をしているように見える。


「え!? あれって、あずき洗いですか?」


「そうらしいな。まあ、洗い物なら安全だ。なごりも直に収まるだろうしな」


「高見沢先生は?」


弓長をとめようとして屋上にいた高見沢の姿がどこにもなかった。
弓長もいない。


「間一髪だったが2人とも無事だ」


「どこにいったんですか?」


「帰らせた。まだ記憶の残る生徒に絡まれたらやっかいだからな。みんな明日になれば、忘れるだろう」


「あやかしのなごりなんて誰も信じないですしね」


「そういうことだ」


すべて、無事解決した。

が、そうホッとした瞬間、来夢はとあることを思いだしていた。


意識を手放す瞬間、司に口走った一言を……。