「お前がどう祈ったか、俺もまだ聞いてはいないからな」
「そうですけど! 司さんなら分かるはずです! ぬいぐみの製作者なんですから!」
「さあな!」
司は意地の悪い顔つきになると、さあ話せとばかりに来夢を見下ろす。
「うっ……さ、さっき言ったことは全部撤回しますからね! 司さんなんか大っ嫌いです!」
「望むところだ」
蒼士とひかりには伝わらないやりとりをすると、来夢は覚悟を決めたと言わんばかりにぬいぐるみをぎゅうっと握りしめる。
そして、
「え、ええと……実は突然、無償~に洗い物がしたくなっちゃいまして……」
ボソリ呟く。
「洗わせてくださいって……祈っちゃいました」
「「ええっ!?」」
蒼士とひかりはキョトンとした後、同時に笑い出した。
「なにそれ! アハハ! 私たち、あんなに必死でみんなを止めてたのに」
「クッ、ハハハ! それで、解決しちゃったの? 洗いたい~で、あのカオスを!」
「わ、笑わないでくださいよ! あんな状況で……、あたしも恥ずかしいんですから」
「清姫のなごりにあてられたみんなに、ぬいぐるみの力でより強いなごりを伝染させたわけだ」
「ほ、ほら! やっぱりわかっていたじゃないですか!」
「予想はしていたが、確信に変わったのはたったいまだ。──まあ、アホっぽい解決方法ではあるが、結果オーライと言ったところだろう」
「ヒドイです! 司さん!」
来夢の罵声はどこ吹く風で、
「さて、一応校内を見て回るか」
司はみんなに背を向けると、校舎へと消えて行った。
来夢はその背を恨めしそうに睨むと、
「ぜ~ったい、さっきのはなしですからね」
小さく歯ぎしりするのだった。