そして、つぎの瞬間には、
『あれ……私……』
『どうして……』
夢から醒めたようなキョトンとした表情になり、さらに、
『あ! 洗い物がしたい!』
『お水! 水道はどこ!』
『なんでもいいから洗わせてーっ!』
なぜか全員が全員、洗い物依存状態に陥ったのだった。
急な光景に蒼士とひかりは口を揃えこう叫んでいた。
『来夢ちゃん!』
『来夢!』
そう、それはどこからどう見ても、来夢が持つあやかしなごり【あずきあらい】の症状だった。
どうやったのかはわからないが、女子たちが皆凶暴な清姫から害のないあずきあらいにシフトチェンジしてしまったのだ。
まあ、それでも人数が人数だけに水道の取り合いで騒ぎが起こっては元も子もない。
蒼士とひかりはどちらが言い出した訳でもなく、水がみんなに行き渡るよう学校中を走り回っていたというわけである。
最後に校庭で一働きしていたのだが、今はだいぶ落ち着いてきていた。
見回せば必死で洗い物をする女性たちと、それを不思議そうに見守る男性たちという図が学校のあちこちで繰り広げられていることだろう。
いま遅刻してくる生徒がいたら、この光景は絶対に理解不能であろう。
「それにしても司、どこにいるんだろう」
「来夢も見てないな」
ようやく水を求める声もなくなり、ホッと一息ついていると、
「怪我人はいないか?」