「さあ、祈れ。小さな運だが、その運を生かすも殺すも来夢、お前次第だ」
その言葉に、すべてを理解した来夢はコクリ、やりにくそうにだが確かに小さく頷くと、その瞳をゆっくりと閉じた。
そして、司の温もりをその頬に感じながら、
「人を好きになることは、辛く苦しいこともあるけど、でもイヤなことばかりじゃないです。清姫さんだってきっとわかってるはずです──これは、この気持ちはとっても素敵なものです! いまならあたしにもわかります! だって……だって、あたしは司さんが、す──」
力強くそう宣言すると、なぜか魂が抜けたようにその身を司に預けた。
その瞬間──。
グニュッと2人に挟まれつぶされたぬいぐるみは微笑んでいた。
パッと眩い光が、ぬいぐるみから空へ舞い上がり四散する。
光の粒が学校中に舞い降りていく。
光を身に受けた弓長が動きを止める。
「……間に合ったか」
司は意識を手放した来夢をしっかり受け止めると、だれも見ていないからか、珍しくほんのわずかに口角を上げ、空を見上げた。
いつのまにか雨の上がった、澄み切った青空を。