背中を打ちながらも、


「お前は──」


再び引き剥がそうとするが、


「……」


司の動きが止まった。


「好き! ……ごめ……さ……離さない! ……司さん、ごめんな、さい……」


「来夢……意識があるのか」


「ちょっと、だけ……でも好き! ……うう……無理、です……」


端からみれば支離滅裂なことを言っている。
だがそれは、来夢本人と清姫が体の主導権をめぐり争っているように見えた。


「そうか──」


司はポケットからそっと何かを取り出すと涙目の彼女の前に差し出した。

それは、小さなお守りだった。

大丈夫と書かれた小さな……。


「それは……」


「覚えてるか?」


「浮気は、ダメ……司さんも、持ってた、ん、ですか」


「記念だからな。来夢とのはじめてのデートの」


「へっ!? ……どうして?」


「さあな」


司は曖昧に答えるが、その目は確信に満ちていた。


「大丈夫だ」


そう言ってお守りの言葉をそのまま口にすると、来夢の頬へそっと手を添えた。


「司さん……」


さらに密着した2人の間から持っていた幸運のぬいぐるみを引っ張り出した。


「これ……」