否定しそうになったが、司は言葉を飲み込んだ。
思い当たる節があったからだ。
司が来夢の彼氏だと、来夢が思い込める理由が。
遊園地デートの際、美波の前では確かに司と来夢は恋人同士だった。
演じていただけではあるが、その後別れたという事実もない……。
清姫のなごりにアテられ、脳や心が混乱しているとしたら、そのことが事実だと思い込んでしまう可能性もあり得るだろう。
司はぎゅっと抱きついたままの来夢を見つめると、
「やれやれだ……」
と小さく息を吐き出し、普段から鋭い目をさらに細めた。
「来夢」
「はい」
「俺は浮気はしない。俺が好きなのはお前だけだ」
「本当ですか?」
「ああ。だから手を離してくれ。どこへも行ったりはしない」
「ずっと一緒ですか?」
「そうだ。俺はこの先、来夢と死ぬまで一緒だ。──イヤか?」
来夢は言葉の真意を見透かそうとしているのか、瞬き一つせず、司の瞳をじっと見つめる。
司は、
「もういいか」
と言いたいところではあったが、それを堪え大きな瞳を見つめ返した。