腕をふりほどこうとするが、女性とは思えない力で微動だもしない。
足や腕を動かし体全体で抵抗を試みても、結果は同じだった。
「男はみーんないなくなるしかないの。この世界から」
意識がだんだんと遠のいていく。
目の前にいるはずの美波の顔がぼやけていく。
と、その時だった。
高見沢の霞んだ視界に一筋の光る滴が飛び込んできた。
それは、降り出した雨だったのかもしれない。
だが、高見沢の目にはそれが、美波が流した涙に映った。
それを感じた瞬間、苦しいはずの彼は薄れゆく意識の中で、一つの言葉を紡いでいた。
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