「古来日本には、妖怪、もののけ、あやかし──言い方は様々だが、人ならざるものが住んでいる。昔は、今よりも彼らと人間は密接な関係で、中には恋愛関係になり、間に子をもうけるものもあった」
「人間とあやかしの子供ですか……」
「その子供を祖先に持つものの中には、時折あやかしの能力を引き継いだものが現れる。能力とは言ってもあやかし本来の力とまではいかない、気持ち程度のものだがな」
「それが、【なごり】ですか!」
「そうだ。だが、なごりとは言えそれを使いこなせない普通の人間にはやっかいな代物だ。ヘタをすれば人を死に追いやったり、自らを破滅に導くこともある力だからな」
「そんな怖い力があったら大変じゃないですか! ──あっ! じゃあ、陽葵ちゃんのやめられないストーカーって、もしかして!」
「ああ。陽葵は【べとべとさん】のなごりもちだ」
「べとべとさん!?」