目の前で繰り広げられるこの光景は、夢では終わらせられそうもなかった。
自分だけならまだしも、生徒を大勢巻き込んでしまったのだ。
高見沢が教育に対する熱意に溢れているかと問われれば、答えはノーだろう。
残念ながらそんな思いで教職についたわけではなかった。
正直、就活先の一つに過ぎなかった。ただなんとなく教師になった気さえしていた。
しかし、だからといってこの状況を無視できるほど落ちぶれてはいないつもりでもある。
荒事は苦手だが、なんとかしなくてはならない。
その思いが通じたのか、
「あれは……」
廊下の先に彼女の後ろ姿がチラリと見えた。
距離は遠いが、幼なじみで恋人の彼女を見間違うはずはない。
解決方法が思い浮かんだ訳ではないが、高見沢は美波へと向かい歩を進めていた。
司を探した方がいいのかもしれない。だが、一刻でも早く事態を収束させるには、自らが美波と話す必要がある。そんな気がしていた。
「美波!」