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みんなは、どこへ行ってしまったのだろうか。
高見沢は呼吸を整えるため立ち止まると、あたりを見渡した。
カウンセラーの司に言われるまま、彼を探していた北条来夢を止めようと声をかけたのだが、
『司さーん!』
と、彼女はこちらへは見向きもせず、それどころか、
『うわっ!』
ドン! と勢いよく体当たりをかまして司を追っていってしまった。
それを追いかけて校舎の一階から四階まで、探し回ったのだが、2人の姿は見あたらなかった。
見えているのは、嫉妬にかられた女子生徒と、それから逃げる生徒という相変わらずの光景だった。
一階から四階までもれなくこの景色が続いていた。
まさに学校中がパニックだ。
これを起こしているのが恋人の美波だとはとても信じられなかった。
昔から温厚でやさしかった美波。
そんな彼女が嫉妬に狂い、他人を、大勢の生徒を巻き込んでいるなどとは信じたくはなかった。
高見沢は美波が豹変してからずっと、これは一時的なことに過ぎず、目が覚めれば夢だったと思えるのではないか。そんな気持ちを少なからず心の中に持っていた。
だが……、
「浮気は絶対に許さないんだから!」
「待てって! なんでそんなに怒ってるんだよ!」
「うるさい!」