モメているとはいえ、興奮しているのは女子高生である。
さっきからずっと警察手帳をチラつかせている蒼士を見れば、萎縮する子がいてもいいはずである。
パターンは違っても、
「警察!」
なんて驚きの言葉が聞こえてきてもいいはず。
しかし、蒼士が声をかけ、大勢から見える位置に立っても、誰一人動きや怒りを止めようとはしなかった。
それどころか、
「もういや! どうして私だけを見てくれないの」
と、泣き出す子や、
「篤志ー、逃げるなー」
箒を振り回す子まで現れ、混乱にさらに拍車が掛かったように見えた。
「これって普通じゃないよね……」
いくら鈍感な蒼士といえど、流石にこれはまともではないと思い至るには十分だった。
そもそも何故蒼士がここへ来たのかと言えば、
『至急来い!』
という司からのメッセージが携帯電話に入ったからだった。
司から【至急】なんて珍しいこともあるものだと、暢気に構えていたが、
「もしかして、これってあやかし──」
と結論に至ったところで、
「蒼士さーん!」
誰かが、猛スピードでこちらへやってくるのが見えた。
「来夢ちゃん!?」