抱きしめられた手にぎゅっと力を込められ、思わず声が漏れる。
が、
「この気持ち、みんなで共有しなくちゃって思ったの。みんなで、ね」
次の瞬間。
ドロリ……。
胸の奥から、なにかが現れた。と同時に痛みは消えていく。
ドロリ。
【彼に……彼に会いたい……】
体中を熱い想いが駆けめぐっていく。
【彼を誰にも渡したくない】
……ドロ、リ。
【あの人をあたしだけのものにしなくては】
来夢は、教室を飛び出していた。
おかしくなってしまった陽葵も、弓長がなぜここにいるのかも、心配していたのが嘘のように、それどころではなかった。
頭の中は一つのことでいっぱいだった。
【彼を──、司さんを、あたしだけのものにしなくては】