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「そんなことがあったのですか……」


陽葵の話を聞いた来夢は、なんと言ったらいいのかわからず、隣を仰ぎ見た。


「なるほどな」


その目線の先にいた司は、驚きも同情した様子もなく近くにあったアンティークのイスを二人に進め自らも腰を下ろした。


「さて、続きを聞こうか」 


「え? いまのでおしまいではないのですか? 陽葵ちゃんがストーカーになってしまうってお話ですよね」


「むしろ本題はここからだ」


来夢は疑問を口にするが、司は、


「肝心なところがな」


と、促すように陽葵を見つめた。


「確かにそう……。その後、家に帰ってお母さんに相談したの。どれだけ止めようと思っても好きな人をストーカーしちゃうって。そしたら──」


陽葵は一度言葉を飲み込むが、決意したように司の瞳を見返した。


「そしたら、それは【なごり】だって。遠い昔、あやかしだった頃のなごりだって……」


「母親にも同じ症状があったということか」


「はい。お母さんも結婚する前は、お父さんにストーカーしてたって……」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


と、ここで再び来夢がストップをかけた。


「お母さんもストーカーだったって、いったいどういうことですか。それにさっきから言ってる【なごり】ってなんですか?」


「来夢……」


「はい」


「お前は人の話を黙って聞けないタイプの人間か」


「そういうわけではないのですが、司さんに声をかけられてから、なんだかビックリすることばかりで」


司はジト目で来夢をひと睨みするが、「仕方ない……」と吐き捨てると、説明をはじめた。