「そ、それは──」


「絶対に許さない!」


その剣幕にたまらず、


「ご、ごめん、わ、わるかった」


謝りながらも男性教師は教室から飛び出していった。


「待ちなさいよ! 浮気者!」


その後を、鬼の形相で早見が追いかけていく。

残された生徒たちは、一瞬唖然としていたものの、次の瞬間、


「……そういえば、大輔。あなた、この間幸子と、2人っきりで映画見に行ったって本当?」


「え?」


「ちょっと仁史! どうしてみゆにばっかり話かけるのよ!」


「は? 席が隣だから──って、なんでそんなに怒ってるんだ」


教室中に嫉妬の嵐が吹き荒れ始めた。

来夢の知る限り、クラスに彼氏や好きな人のいる女子はもれなく、その相手にカラミはじめていた。

それは例外なく、さっきまで隣で来夢へ心配の眼差しを向けていた陽葵でさえ、同じだった。


「どうしちゃったんだ、みんな。2人とも大丈夫?」


やっと念願叶って付き合えた大好きな相手のはずが、智也が近づいてくると、


「ねえ智也……、昨日、来夢のことをカワイイって言ってたわよね」


「陽葵?」