「どうなさったんですか弓長先生。それに、み──、いや早見先生も」
それは、教室のドアを突然開いた2人に対してだった。
授業中、他の教師が2人もやってくることなど経験のない生徒たちは、
「緊急事態?」
「なに?」
と、ザワツキ始めるが、弓長と早見はさして気にした様子もなくズカズカと中年教師の前に立った。
「あの、なにかあったんですか?」
再度、中年教師が問いかけると、腰に手を当てた早見が、ズイッと威圧するように前に出る。
そして、生徒たちの目の前でまさかの光景を繰り広げはじめた。
「このっ、女ったらし!」
バチンと小気味良い音を響かせた早見の平手打ちが男性教師の頬を直撃した。
突然の事に、教室の全員が固まる中、早見は続ける。
「あなた、私と付き合っているのに、教育実習生の子と毎晩デートしているんですって!」
「な、なんでそれを!」
「高見沢先生から聞いたのよ!」
「あいつベラベラと……」
「彼が口が軽い訳じゃないわ。高見沢先生は押しに弱くてあなたと仲がいいから、私が何度も無理矢理お願いして教えてもらっているだけ。そう、前の時もね……。あの時は他校の教師だったわよね! あの時、もう二度としないって約束したわよね」