来夢が人をかき分け、こちらへやってくるのが見えた。
美波を探すのに人手は欲しいから、来夢にも協力してもらうつもりではあった。
が、なにかがおかしい。
「探しましたよー」
司は断定はできないが、来夢に小さな違和感を覚えた。
まっすぐこちらへ向かってくる姿はいつも通りの来夢で間違いはないのだが、
「目か……」
その瞳がわずかに、違っていた。
瞳孔が大きく開き、その奥からは獲物を見つけた獣のような意志が見受けられたのだ。
明らかに怪しい。
(あれは……)
そこからの司は早かった。
「高見沢、来夢を止めろ!」
「へ? 北条をですか? 一緒に美波を探してもらうんじゃ──」
「いいから、俺に近寄らせるな」
「北条を近寄らせるなって、どうしちゃったんですか神代先生」
「とにかく止めろ! 緊急事態だ」
「は、はあ……」
よく理解出来ずにいる高見沢に念を押すと、司は来夢が来るのとは反対にある階段へと走りだした。