「ま、まずいですよ」


校舎へ戻ると、高見沢が弱々しい声を出す。

それもそのはずで、


「ちょっと待ちなさいよ、たかし!」


「だから浮気なんかしてないって」


「豊! 美里! あなたたちずずっと怪しいのよ!」


「俺たちは友達だって」


「そ、そうよ。だから落ち着こう真由」


校舎内は体育館と同じ、いや、それ以上に嫉妬する女子とそれに絡まれる男女で大騒ぎとなっていた。

授業中で静かなはずの校内は、一年で一番賑やかな文化祭以上の盛り上がりに見えた。

司は小さくため息を吐くと、携帯電話をしばらく操作し、


「まあ、なんとかなるだろ」


と軽く言い放った。


「なんとかってどうするんですか」


「心配するな。どちらにしろ弓長を止めなければ、被害は大きくなる。お前は彼女を探すことに集中しろ」


廊下でモメる生徒たちを縫うように進み、一つ一つ教室を覗いていくが、現況である美波の姿は見えない。

嫉妬心を振りまきながら、いったいどこへ消えてしまったのか。

一番心当たりのありそうな恋人である高見沢は、


「美波……どこにいったんだ?」


さっきからこの調子で、アテになるとは思えなかった。

体育館から伸びる廊下の左右にある教室の捜索を終え、二階へ上がる。


と、


「司さーん!」