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血相を変えた高見沢がカウンセリング室に飛び込んできたのは、午後の授業開始のチャイムと同時だった。

「か、神代せ──み──、美波が──」


よほど慌てて走ってきたのか、呼吸も荒くゼーハーと息を漏らしながらも何かを伝えようとしてくる。


「ひとまず落ち着こうか」


司は相談者を落ち着かせるのに使っているペットボトルの水を差しだし、
飲むように促す。

単純で当たり前の行為にみえるが、水が緊張や不安を取り除くのに効果的であることは科学的にも証明されている。
ついでに飲むための時間を少し待てば呼吸も整う。


「神代先生、大変です!」


「どうした?」


「美波が、清姫のなごりがまた暴走しました!」


会話もスムーズに進む。


「僕と話していた早見先生と近くにいた生徒まで連れて、凄い形相で体育館の方へ」


「すぐにここへきたのか」


「はい、行き先は一応確認しましたが」


ダブルデートの後、万一に備え美波のなごりが発症したらすぐに知らせるよう高見沢へは言ってあったのだ。

あやかしの血が色濃く出てしまっているだけに、誰かを傷つけないとも限らない。


先ほどカウンセリングをしたばかりで、だいぶ晴れやかな顔をしていた矢先ではあるが……。


司は上着を羽織ると、高見沢とともに部屋を後にする。