先程から蕩けるような表情で、花梨の話に耳を傾けている男の子。

 ハニーブロンドの髪に、金色の瞳。
 明らかに日本人ではない色合いと、人間離れした美しい容姿。

 狐月瑶太。
 花梨を花嫁に選んだ、妖狐のあやかし。

 あやかしの中では上位にある存在で、資産家でもある彼の家には、花嫁の家ということでいくらかの援助をもらっているらしい。

 それにより、花梨を学校に入学させるために作った借金も返済したとか。

 両親以上に花梨を溺愛している彼とは、何度か顔を合わせたことはあるものの、言葉を交わしたことはない。

 そもそも、柚子はこの家に寝に帰るぐらいだし、土日は祖父母の家に居座っている。

 顔を合わせたのはほんとに数えられるほど。
 顔を合わせたとしても、瑶太は花梨のことにしか意識がいっていないので、ほとんど目が合うこともない。
 ただ花梨の姉でしかない柚子のことなど眼中にないのだ。

 だが、花嫁とはそれだけあやかしにとって大事な存在らしい。
 他が見えなくなるほどに。


 柚子は思う。
 それほどまでに愛されるとはいったいどんな気持ちなのだろうか。

 何を置いても、全身全霊を掛けて愛される花嫁は幸せなのだろうか。


 花梨を見る限りでは、とても幸せそうだ。

 絶対に柚子には出せない、幸せいっぱいの笑顔。
 空気からして、愛されている事が分かる。